IXI事件は、多くの大手情報システム関連企業がスルー取引の連鎖(循環取引)に関連していた事件です。
「堅調」というよりも「異常」なほどの業績の伸びを示していたIXIは、2007年1月、半期報告書の提出が遅れたかと思うと、突然、民事再生手続の開始申し立てにより破綻し、2007年2月に上場廃止となります。
不正発覚時のIXIの親会社は、1999年12月にマザーズ上場第1号の会社として注目を浴びたインターネット総合研究所(IRI)です。同社は2005年8月に、IXI株式を株式公開買付(TOB)で買収しました(143億円)。
しかしその後、IXIは買収の前から継続して大規模な架空循環取引が存在していることが発覚します。
IXIの売上の推移を簡単に示すと、2004年3月期113億円、2005年3月期176億円、2006年3月期403億円でした。合併や買収を繰り返して業績を拡大することはよくある話ですが、そうでもなければこの業績の推移はまさに「異常」と考えられます。結果的にこの売上高の8割、9割は架空だったとされ、加えて簿外負債が100億円以上あったとされます。その結果、IRIももちろん含まれますが、多くの投資家が損害を被りました。
ことの発端は監査法人の監査だったとされます。
架空の循環取引は架空の在庫を伴うことが一般的で、監査の過程でこの架空在庫が問題視されました。
その指摘を受けて行われた社内調査の結果、架空の売上や簿外負債が明らかになり、IXIは半期報告書を提出しないままに上場廃止となりました。
IXIの親会社であるIRIの業績は、IXIの業績により大きな影響を与えるという理由で、IXIの中間決算(2006年12月中間期)も意見不表明となります。つまり、「子会社である㈱アイ・エックス・アイ・・・の財政状態が把握できないという状況であることに鑑み、・・・同社株式の評価にかかる十分な監査証拠を入手」できなかったとの理由です。その結果、東京証券取引所は2007年6月IRIを上場廃止とします。その後、IRIはオリックスとの株式交換で、同社の完全子会社になります。
もちろん、粉飾していたIXIの株を購入して大損害を被った、という点からすればIRIが被害者であることは自明でしょう。一方で、IXIを買収するにあたり、IRIはIXIの財務調査(デューデリジェンス)を十分に実施しなかったとの指摘があります。仮に十分に調査をしていれば、IRIが多額の資金を投じて無価値な株を買うことはなかったばかりでなく、その他の投資家もIXIの株式の価値を見誤ることはなかったのではないかとの指摘です。
騙した側がIXIであり、IRIが騙された側とするならば、騙された側を非難するのは躊躇いがありますが、それでもなお、釈然としない面はあります。この問題はそれだけ厄介だということでしょうか。
なお、IRIは、何ら落ち度なく多額の損害を被ったとして、IXIの元親会社であるCACを相手取って損害賠償請求を提訴しており、その結果、2011年6月にCACが30億円をIRIに支払うことで和解が成立しています。また、IXIの監査を担当していた新日本監査法人ともIRIに1億5千万円を支払うことで和解が成立しています。
さらにIRIは、2011年7月、株券上場廃止基準に該当する事由はなく、東京証券取引所による上場廃止処分は、上場廃止基準の解釈適用を誤ったものとして、東京証券取引所を相手取って、50億円の損害賠償請求を行っています。
その後、IXIの元社長には、証券取引法違反を理由として、大阪地裁は2009年11月、懲役3年、執行猶予5年、罰金800万円の判決が言い渡されました。また、2011年2月には、同社の管財人が元役員に対して行った損害賠償請求4億円が認められます。
粉飾発覚から5年以上経過した今でも話題がつきない、大きな事件だったのです。
また、新たな判決が出たときに再考してみようかと思います。 Taku