2015年12月 大晦日に思う。研究者不正の「たちの悪さ」

 

 「ギャンブルフィーヴァー」や「ツキの法則」の著者の谷岡一郎氏。
 いずれも新書での発行で、その興味深い題名に惹かれて購入し、一気にファンになりました。一般に、賭け事・ギャンブルは「御法度」=「悪」と思われがちですが、これを社会科学として正面から検討している点がとても興味深く感じました。
 年末に購入した書籍の中に、谷岡氏の「科学研究とデータのカラクリ」という新書があります。テーマは「研究者不正」です。
 「STAP細胞事件」、「ノバルティスファーマの臨床試験データ改ざん事件」、「厚労省ギャンブル依存症記者発表問題」が題材となっており、いずれも大変興味深いテーマです。
 その中で、「研究者による過失・不正のレベル」が紹介されていました。
 研究者不正は、研究者としての社会的な地位を利用し、また関係者がその研究者を信用している分、一般的な不正と比べて、金額的・質的に大きな影響を与えていると考えられます。本書の中の「研究者不正の悪質さ」=「たちの悪さのレベル」に係る記述は「不正事例研究会」のテーマでもある企業会計の不正においても参考になるため、下記にその一部を引用させて頂きました。

【研究者による不正・過失のレベル】
レベル1(単なるミス)
 書き写し間違い、思い込み、知らずに引用、記述漏れ
レベル2(未熟・不作法)
 因果律の過信、研究記録の不備、引用ルールの無視、文法ミス、定義の不明確さ
レベル3(ずさん・一方的)
 質問へのはぐらかし、プライバシー侵害、強引な解釈・主張、二重投稿
レベル4(意図的ミスリード;不作為を含む)
 他人の不正無視、批判無視、研究費流用、不都合データへの不言及、根拠のない主張
レベル5(犯罪行為;即アウト!)
 論文の盗用、データ操作、データ改ざん、ねつ造

 なるほど研究者の論文に限らず、仕事上のコミュニケーションを考えても、「優秀な方」は、レベル3~5は一切該当がないでしょうし、逆に「胡散臭い方」は、これらに該当するケースが多いのかも知れません。また、レベル1~2の「ミス」「未熟」「不作法」についても、優秀な方の該当は数少ないでしょうが、「優秀ではない方」はレベル1~2に多く該当している気がします。
 本書でさらに私が興味深かったのは、上記レベル1~5に該当しない「上記以外の掟破り(下品な行為)」としての以下の行為です。
 「学会の名を使って商売」、「ピア(仲間)の優遇」、「身内に甘い処理」、「事なかれ主義」、「事実を認めない」、「謝らない」、「批判者をわざと攻撃」、「開きなおり」・・・。
 本書では上記の用語について細かい解説が付いており、とても興味深いのですが、これらもまた、必ずしも研究者のみに該当するわけでなく、一般的な適用が可能でしょう。
 不正は軽微なうちにその芽を摘むことが重要ですが、こうした研究者不正の事例を読むことで、不正の兆候を把握することに繋がると思います。Taku