不正事例研究会 by 中里会計事務所
2013年3月 ネットワンシステムムズの続報 不正のトライアングル(2)
既報の
ネットワンシステムズの元社員による不正行為
の調査結果が2013年3月に公表されていました(忙しくて更新が遅れていました)。
「
当社元社員による不正行為に係わる調査結果に関するお知らせ
」
本不正行為は「優秀な営業マン」として評価が高かった不正首謀者(以下、A)が、約7年間にわたり取引先との共謀により、架空の外注費を計上し、789百万円(前回の報道よりも40百万円ほど増加しています。)もの金員を流出させ、それを詐取し続けた事件です。
これだけ長期にわたる不正であり、また金額も大きいですから、当然に事前に社内で問題になっていることが想定されましたが、上記報告書によると、やはり内部監査担当者が当該不正の兆候を把握していることが示されています。内部監査担当者は、あと一歩で不正を発覚するところでしたが、残念ながら検証が不十分なまま調査は終了しており、結果的には、Aの説明を「鵜呑み」にしていたようです。(架空の外注先の本店が商店街の一角のアパートであることを突きとめながら・・・なんとも残念でした。)
また、今回の不正発覚の発端は国税庁の調査(架空の外注費計上の否認等)でしたが、通常、税務調査の対応は経理部等の税務申告を管掌する部署が行うところ、本件では「本社が主導すべき国税調査対応をAが牛耳っていた」とされます。
この時点で、国税庁の人だけでなく、社内のほとんどの人間が「これは何かあるな?」と気ついたはずです。国税庁に対して営業マンのAしか説明できない状況がある、ということ自体が「あり得ない」からです(実際に社内では、独自に外部弁護士を交えて調査を始めたようです。)。
要するに「
Aは特別な存在で、何をしてもお咎め無し
」という社内の環境ができあがっていたわけです。ただ、Aの残念なところは、内部の者はねじ伏せることはできても、外部の人間には、儚くも無力だったことです。
当然のことですが、Aは「嘘」をついているわけですから、その回答に矛盾が生じるはずです。やはり国税調査でも不審な外注費が問題となりますが、Aは内部監査とは異なる説明をし、国税庁にその矛盾を憑かれます。しかしAはその矛盾を解消するべく、内部監査の監査記録を加筆するよう内部監査担当者に依頼したのです。内部監査室はその要求に応じてしまいますが、調査報告書では、「A の要求にしたがって安易に監査記録に加筆する行為は、内部監査室の独立性に反する行為であるといわざるを得ない。」としています。
確かにその通りですが、私が最も気になるのは『
内部監査担当者は独断で監査記録に加筆したのか?』
ということです。換言すれば、「内部監査部門長が指示を仰ぐべき最高経営責任者等は、何も知らされないままだったのか?」ということです(もしそうであれば、内部監査部門長の責任は、かなり重いはずです)。
Aは無名の従業員ではなく、社内の評価が高い「やり手」です。
上層部も一目置く有名人でしょう。
社内の内部監査部門の評価にも左右しますが、内部監査部門長としては、「あのAと対峙している」ということについてプレッシャーを感じつつ、「もはや独断で責任の負える案件ではない」、と考えていたかも知れません。
少なくとも私が内部監査担当者ならば、そのように考えますし、「Aがまた問題になっています」と上層部に連絡を入れるでしょう(この辺りは、改善提案等を含めて、調査報告書に直接的な記述はありません。できれば内部監査部門長の本件に関するコメントを聞きたいところです。)
もちろん、調査報告書では、役職者の減俸について明記されてはいますが、その不正の兆候に気付いていながら抑止できなかった責任について、内部監査部門以外の者の責任について、もっとクローズアップしても良かったのではないか、と考えます。(Aに対する調査結果や内部監査の監査調書の加筆について、内部監査部門長が上層部に何ら報告をしていなかった場合にはその旨を明示しても良いでしょう。)
ちなみに、前回の記事に関連して同社が本事件についての「不正のトライアングル」を示しています。
「(イ)動機
A は、NOS(ネットワンシステムズの略) の営業幹部として相当額の収入を得ていたが、高級クラブでの飲食、大きな家、高級車、ゴルフ会員権などのためには、NOS からの給与だけでは足りないと思っていた。そして、B(外部共謀者;取引先のX銀行行員)、C(システム会社社員) と共に、強い意思をもって能動的に、詐欺を実行したものである。
(ロ)機会
NOS における内部統制システム、ガバナンスの脆弱性は、A、B、C らに犯行の機会を提供すると共に、長期間にわたる犯行、さらに大胆な犯行を可能にする機会を提供し続けた。
(ハ)正当化
NOS に残存している属人的企業風土の中で、「できる営業マン」と周囲から賞賛され、「X銀行案件はA 案件」として他の関係者がA に頼り、思考停止状態にあったことは、「NOSの売上、利益に貢献しているのだから、利益の一部を自分のものにできて当然」という正当化の根拠をA に与え続けた。」
最後に、調査委員会のヒアリングに対して、A は、以下のコメント残したそうです。
「処分については、これまでのNOS に対する私の功績を考慮してほしい。私は多額の受注、売上、利益で会社を十分儲けさせてきた。」
これも不正リスク要因の一つとしての「正当化」の例であります。念のため。Taku
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