食品生産機械の開発、製造、販売を手がけるレオン自動機株式会社で、子会社における製品の不正流出と見られる事案が発生しました。公表資料によると、アメリカのカリフォルニア州「オレンジベーカリー」という連結子会社で製造した冷凍パンの一部を社員が不正に流出させていた可能性が示されています。
金額は200万ドル(80円/ドル換算で1億6千万円)ですが、この不正は12年(1999年4月~2011年3月)の長きにわたり行われていたようです(こうした長い不正は、「なぜ発覚したのか」が注目されるのですが、公表資料では明らかになっていません)。
同社グループの2011年3月期の売上高は172億円、経常利益が8億8千万円ですから、決算に与える影響について重要性はないと判断される可能性がありますが、会社は再発防止策を下記のように示しています。
(1) 権限を一人に集中させないよう、組織の変更と権限の分散を実施
非常に基本的なことですが、一定の業務を一人に委ねると不正の発生可能性が高まる一方でその発見可能性が低くなります。不正が生じやすい可能性に応じて、組織、権限分散のあり方を考えることが内部統制構築の基礎です。
(2) 受注、生産、在庫、材料発注のシステムでの管理の徹底をするよう改めチェック機能の強化を図る
「冷凍パンの一部を社員が不正流出」したというのは、いわゆる在庫の横流しで、会社に無断で同業者に販売して、その資金を横領するケースが想定されます。こうした不正を防止するには、材料の購入、生産、在庫等、モノの動きを管理する仕組みを強化することも重要ですが、標準的な材料の消費量を把握しておき、それと実際の生産量や販売量とが整合するかどうかチェックするといった監視も、時として有効な場合があります。特に、不正実行者が「もしかしたら見つかってしまうかも知れない」と思わせるようなチェック機能を工夫することが重要です。
(3) コンプライアンスに対する社員教育の徹底を図る
社員教育は従業員のレベル向上に有効です。効果的な教育方法については検討が必要でしょうが、「不正を許さない雰囲気」を作り上げることが重要です。そのためには、管理者がちょっとした不正も許さない姿勢を示し、厳格な態度で不正に対峙することが重要です。
<表示の問題>
在庫の横流しの場合、実際になくなった在庫は実地棚卸の対象にはならないため、棚卸減耗として売上原価に含まれて計上されることが一般的です。本事例でも被害金相当額は1999年4月から2011年3月期までの過年度決算において売上原価に計上されていることが示されています。
ただ厳密には、売上原価として計上されるのは適切ではなく、従業員の不正による損失として営業外費用(又は特別損失)に計上することが適切です。この点は開示資料に示されているとおりですが、金額的な重要性の判断如何によっては、特に問題視されるレベルにはないのかも知れません。