レンタル業を中心として事業展開するゲオは一般の消費者にもなじみのある会社ですが、平成23年5月19日に公表された報告書によると、下記のように連結子会社における不適切な会計処理が公表されています。
1.循環取引等の架空の仕入・売上計上
2.リベート等の不正受領等
両者とも典型的な不正のタイプに該当しますが、それぞれの概要を見ておきましょう。
まず、1.ですが、同社の子会社では、循環取引を中心として架空の仕入計上及び架空の売上計上を繰り返し、以下のように業績を良く見せかけていたようです。
平成21年3月期 平成22年3月期 平成23年3月期
① 架空仕入の計上 131百万円 1,076百万円 2,292百万円
② 架空の売上計上 105百万円 1,127百万円 2,376百万円
不正は次第に金額が大きくなっていく傾向があります。最初は恐る恐る不正に手を染めていくけれども、次第に大胆になっていくわけです。一度不正に手を染めるとなかなか抜け出せなくなり、雪だるま式にその影響額が増加していくことも典型的なパターンでしょう。
一方、2.ですが、これは会社の購買担当者が自らの地位を利用して私利私欲のために会社を食い物にしているケースです。以下、報告書で掲げられている不正のパターンをいくつかピックアップして紹介します。
① 仕入業者から支払われるリベートの横領
これは多額、大量の仕入れを行った場合、その謝礼として支払代金の一部を仕入れ業者から返戻してもらう金(リベート)を私的に流用する不正です。仕入れ代金はゲオが払っているわけですから、その割戻しのリベートもゲオがもらうべきところでしょうが、購買担当者が「自分のもの」にしている不正です。
② 購買担当者に利益が生じる商流の仕組み
ゲオは店舗での小売り販売のため、種々の商品を仕入れていますが、通常は業者からその商品を直接仕入れれば足ります。しかし、この購買担当者は、まずその商品を自ら業者から仕入れています。その上で、ある会社(A社)にその商品を販売します。さらにそのA社がゲオ社に販売しています。
こうすることで、ゲオ社が業者から直接仕入れるよりも、より高い金額で仕入れることになり、その利ざやは、購買担当者の個人とA社とに残ることになります。ゲオ社が高い金額で仕入れている分、購買担当者とA社とが不正に利益を得ることが出来るわけです。もちろんA社に生じた利益は、この購買担当者個人に貫流しています。
③ ゲオ社の扱い商品を自己処分
この購買担当者は、店舗で売れ残った商品を業者に返品するのではなく、自ら買い受けてネットオークション等で転売していました。また、ゲオ店舗用の商材を個人的に仕入れて販売しています。こうした行為はゲオ社に生じるはずの利益を個人的に享受している点で問題があります。
このようにこの購買担当者は、自らの地位を利用して、様々な手口を行っていまいた。
きっと、最初の不正は少額だったのでしょうが、「大丈夫」「見つからない」「もっとやっちゃえ」「やらなきゃ損だ」というような心境の変化があったに違いありません。
いつかばれると分かっていても、「ここまできたら、しょうがない」という犯罪心理が会社の損害を大きくしたのかも知れません。
なお、こうした不正が早期に発見されなかった原因として、調査報告書では「内部管理体制上の問題」を指摘しています。特に、子会社買収後の統合作業の欠如が問題だったようです。つまり、子会社を買収した後は、その子会社で不正が生じないように管理体制を強化するものですが、このケースでは、「ほったらかし」にしていたようなのです。
購買担当者に与えられる裁量が大きさや、長期間にわたり特定の仕入先を担当していたことも問題視され、リベートやキックバックの要求、収受が横行していたようです。
このような環境下では、不正を行うことに躊躇いを感じなくなるのかもしれません。
少しでも上司による部下の監視(モニタリング)が機能していれば、事前に防止できたかもしれませんし、不正が多額になる前に発見できたでしょう。