山の上ホテル。
昔々、先輩に連れられて、良く飲みに行きました。もう20年近くも前の話ですが。
厳かな落ち着いた雰囲気がとても好きでした。夜な夜なのラウンジ利用専門で、宿泊したことはないのが残念です。
その山の上ホテル(東京都千代田区神田駿河台)で下水道の不正が発覚しました。
聞き慣れない不正ですが、報道によると2012年6月までの約3年間にわたり1,800万円の下水道料金を不正に免れていたため、東京都水道局は、未払分と過料を合わせて5,400万円を山の上ホテルに請求したようです。
3倍付(1,800万円×3=5,400万円)?
条例によると、「偽りその他不正の手段により料金の徴収を免れた者は、免れた金額の5倍に相当する金額(5倍に相当する金額が5万円を超えないときは、5万円とする。)の過料に科せられる(東京都下水道条例第25条及び第26条)」とのこと。
5倍付?
この点、計算が合わないのですが、具体的な数値が把握できていない以上、追究は諦めましょう。
個人的に気になったのは、この過料の高さです。3倍にしても5倍にしても懲罰的です。
この懲罰的な倍率は「その不正の発覚しにくさ」に起因しているのでしょう。
そもそも下水道は、排出する汚水料によって計算されますが、問題はどのように排出量を計算するかです。東京都水道局のHPによると、以下の通りです。
① 水道を使っているときは、水道の使用料を汚水排出量とみなす
② 井戸を使っているとき
・手動式井戸は、使用人数等から汚水排出量を認定する
・モータ付井戸は、ポンプの揚水能力にモータ稼働時間(モータに時間計を設置;下水道局が費用負担)を乗じた量(井戸からの揚水量)を排出量とする。
なるほど。
水の排出量は「直接的」には把握できないのです。だから、あくまで水道の使用料(井戸水なら揚水量)に着目をして、「これだけ使ったんだから、これだけ排出しただろう」と「間接的」に把握しているのです。(ということは、庭に水をまいても下水料金を取られていることになりますね。)
しかし、排出する場所の全てにメータをつけるわけには行きませんから、この方法でも、やむを得ないのでしょう。
逆に言えば、井戸水をたくさん使って排出水量が増えたとしても、黙っていれば誰も解らないのです。
これが、「5倍付」の理由でした。見つかったら大変だから、事前に届けさせようとする発想です。
山の上ホテルでは、井戸水を揚げる管に検診メータが付いていたようですが、この管を迂回するバイパス管を取り付けて、検診メータを通る水量を調整して、揚水量を誤魔化していたようです。
まさに確信犯。悪意に満ちているといって良いでしょう。
同ホテルによると、「井戸水は水道水節約のため調理場の清掃などに使っていた」「処分を真摯に受け止める。」と話したようです。
発覚した原因は、匿名の情報提供に起因した立ち入り調査だったようですが、不正実行犯は、まさか見つかるとは思っていなかったのでしょう。
悪事千里を走る。
お天道様はお見通しでした。
ちなみに余談ですが、井戸を使う場合(浴場、ホテルの他、家庭でも)には届け出が必要ですし、工事等で湧き水が発生して下水道を使って排出する場合にも「公共下水道の一時使用届出」が必要となるようです。
さらにありそうな話で、雨水を貯留してトイレ等(下水)に利用する場合にも料金徴収対象になるから使用届が必要とのことです。
ということは、無届けで雨水を貯めて使い、これを下水に流したら、「5万円以下の過料」を科せられることになります。家庭で雨水を貯めて使うくらいは勘弁してください。庭にまいた水も下水料金を払っていますしね。Taku