ダスキンの運営するミスタードーナツの事件は社会的に大きな影響を与えました。
我が国で認められていない食品添加物が使用されていることを知りながら、これを直ちに回収処分せ
ずに販売を継続していた事件で、販売終了後もその事実を公表せずにいたところ、内部告発で当該事
実が発覚しました。
この事件で注目すべき点、以下の二つです。
一つは、不祥事に直接関与していない取締役であっても善管注意義務違反の責任を認めた判決が出た
ということです。
また今ひとつは、この事件以降、「食品偽装が明らかになった場合には隠蔽せずに公表した方が良
い」と会社側が判断するきっかけとなったということです。
ダスキン株主代表訴訟(2008年2月)最高裁の判決を以下、引用します。
「当面の販売停止や在庫破棄に伴う損害を回避するただそれだけの目的で、事実を隠蔽し、販売を継
続することは、消費者の食の安全衛生に関する心理を無視して自社の目先の利益を優先するものに他
ならず、消費者からの重大な反発を招き、ダスキンに対し、当面の損害回避によって得られる利益を
遙かに超える深刻な損害をもたらすだろうことは、雪印乳業株式会社の事例によっても、容易に想像
できたものである。したがって、本件に経営判断の原則適用の余地はない。
食の安全性確保は、食品会社に課せられた最も重要で基本的な社会的な責任である。
万一安全性に疑問のある食品を販売したことが判明した場合には、直ちにこれを回収するなどの措置
を講じて、消費者の健康に被害がでないようにあらゆる手立てを尽くす必要があることはいうまでも
ない。」
食の安全に関する事件も後を絶ちません。
上記の判決で引用された「雪印乳業株式会社の事例」は、2000年に起きた戦後最大の集団食中毒事件ですが、被害拡大の要因の一つに会社側の対応の遅さが問題視されました。当時の社長が多くの記者に詰め寄られながらの質問に「私は寝てないんだ!」と発言し、被害者の容態を考慮しないこの発言がマスコミで大きく取り沙汰されていたことを思い出します。
乳業関係でいえば、1955年6月~8月、森永ミルク中毒事件もまた、凄惨な事件でした。
森永乳業の粉ミルクが原因で死者130名。
ミルクの摂取が原因で容態の悪くなった乳児、そのヒ素ミルクの摂取を拒む乳児に、懸命にそのヒ素ミルクを与え続けた母親の無念さは、想像できようはずもありません。
過去の不正事例から学ぶことは多岐にわたると思います。
決して繰り返してはならない数多くの事件に目を向けなければならないのです。Taku