新潟県の電子部品機械メーカーのプロデュースは、他の粉飾事件と比較して、かなり特異な事例です。
決算書は会社が公表するものですから、粉飾事件は通常、会社側の責任が問われた後に、それを見逃した監査人の責任が問題視されます。しかし、この事件では監査人が主導して粉飾を行ったとされる、なんとも情けない事件です。
2004年10月に発生した新潟県中越地震による影響もあったようですが、公開直前期である2005年6月期では実際は赤字だったはずが、会計士の指導による循環取引によって売上と利益を嵩上げし、虚偽の有価証券届出書を提出して同年12月にジャスダックに上場します。
上場に際しては業績の縛りがあるのが通常で、直前期が赤字である以上、上場を諦めざるを得ない状況にありながら、粉飾した売上高・利益で成長性をアピールしました。上場審査も簡易だったのではないかとの指摘もありました。
この粉飾の特異さを示すエピソードは他にもあります。
・粉飾を指導した会計士は、同社の元幹部に口止め料10百万円を支払った。
・その会計士は、同社社長から借入金9,000万円があった。
・その会計士は、その監査法人から4,900万円の資金を着服していた。
・同社は、2008年8月にジャスダックから優良IR賞を受賞している。
・その翌月の2008年9月、粉飾の疑いで同社に証券取引等監視委員会の強制調査が入る(その後、直前期を含む3年間で117億円の売上高水増しが明らかになります)。
強制調査後は、社長と専務辞任、監査法人の契約打ち切り、総会の延期、民事再生申請、上場廃止と続きます。堅調と思われていた会社が一気に倒産したのです。
その後、2009年3月に社長と専務が逮捕、4月に会計士が逮捕、2010年8月に社長は懲役3年、罰金10百万円の実刑判決を受けました。
「愚者が池に投げ込んだ石は、賢者が10人集まっても取り戻すことはできない。」
この事件の社会に与えた影響は、計り知れません。
さらに2011年9月には、株主(個人225人法人4社)が監査法人と監査役を相手取って損害賠償請求(723百万円)を提訴しています。今後の訴訟の結果も気になる事件です。Taku