2012年10月 コマニー不適切な会計処理?(関連当事者の開示の要否)

 コマニーは今回の中国子会社の不適切な処理に係る疑惑に関して、過去5期分の連結財務諸表を修正すると公表しました。連結の範囲に含まれていなかった子会社(南京捷林格建材有限公司(以下,「捷林格」という。)との取引を連結財務諸表に反映する修正を行うようです。

この点、前々回は「二重監査の問題」、前回は「子会社の妥当性」の検討をしましたが、今回は最終回として「関連当事者の開示の要否」について検討します。

 

 今回の事件の中心に位置づけられる捷林格(コマニーの中国子会社である格満林実業のC副総経理(副社長)が議決権の全てを所有)の設立は、20074月です。20118月にコマニーは捷林格を買収していますから、その4年余りの間の取引が問題となります。(ちなみに、格満林実業から捷林格への売上高の推移は、2007年度(9百万円)→ 2008年度(44百万円)→ 2009年度(158百万円)→ 2010年度(269百万円)でした。)

 以下、コマニーを連結開示会社として、捷林格及びC副総経理との取引が関連当事者との取引として開示されるべきものか検討します。

 

(1)  重要性の判断

調査報告書でも引用していますが、会計基準では関連当事者の定義には、「⑨『重要な』子会社の役員及びその近親者、⑩その者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及び子会社」が含まれます。

この点、上述したとおり、格満林実業はコマニーの中国子会社であって、C副総経理はその副社長に該当します。また、捷林格はC副総経理が実質的に全ての議決権を保有しています。そのため、コマニーから見てC副総経理は「子会社の役員」に該当し、捷林格は「その者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社」に該当します。

以上から、捷林格及びC副総経理は、コマニーの関連当事者に該当すると考えます。

しかし、調査報告書では重要性の観点から「C副総経理及び捷林格との取引が関連当事者として開示されるべきものには当たらない」としています。

この判断は疑問が残ります。

確かに調査報告書の述べているとおり捷林格は、会社グループの中核事業を担っているとは言えないでしょう。その意味では重要性はないのかも知れません。しかし、「中核事業を担っているかどうか」はあくまで重要性判断の一つの例に過ぎず、そもそも重要性の判断は実質的な見地からなされるべきです。

特に、不適切な取引が行われる可能性に配慮して関連当事者との取引の開示が求められているという開示の趣旨や、結果論的ではあるものの証券取引等監視委員会から不適切な処理が行われているのではないかとの疑念が指摘されたことを考慮すれば、同社との取引は「重要性はあった」と判断すべきように思えてなりません。

 

(2) 捷林格を子会社とするなら非連結子会社に該当

一方で、調査報告書では「捷林格は当初から子会社に該当する」という考え方が採用されています。にもかかわらず、実際にはコマニーは捷林格を連結の範囲に含めていませんでした。そのため、コマニーは結果的に捷林格を「非連結子会社」として扱っていたことになります。

非連結子会社との取引は、当然に関連当事者との取引として開示対象になりますから、上記(1)の重要性の判断にかかわらず、捷林格との取引は関連当事者との取引の開示は必要だったことになります。

この点、冒頭でも示したようにコマニーは過年度の連結財務諸表を修正することとしていますが、この過年度の修正は、捷林格との取引を関連当事者との取引として開示することを意味するわけではありません(個人的には、関連当事者との取引として開示して欲しいとと思いますが)。

なぜなら、調査報告書では、あくまで捷林格は設立当初から連結子会社に該当していると考えています。そのため、同社との取引は連結上相殺消去されることとなり、連結上相殺消去された取引は、関連当事者との取引の開示対象にはならないのです。

 

コマニーや調査報告書の作成者が、捷林格との取引を関連当事者との取引として開示することを回避する意図があったかどうかは定かではありませんが、仮に「当初から子会社であったわけではない」として、また仮に上記(1)の重要性が認められれば、関連当事者との取引を含めた連結上の修正が必要となるでしょう。あくまで仮定の上での話ですが。

 

以上、二重監査契約、子会社の範囲、関連当事者の開示の要否という3回にわたりコマニーの調査報告書の検討をしました。興味のある方は第三者委員会の調査報告書(要約版)を読んでみてください。taku