気が滅入るニュースが飛び込んできました。
「公認会計士の逮捕」。
コンサルティング会社社長とその社員である公認会計士ら5名が業務上横領容疑(380百万円の不正送金での着服の容疑)で逮捕されました。
「逮捕」となれば相当の証拠があるわけでしょう。しかし逮捕された側は全員、容疑を否認しているようですから、なにかの間違いの可能性も否定できません(経験的にはその可能性は低いと思いますが)。
いずれにしても現時点ではマスコミの報道以外、全く情報がありません。
事実関係がハッキリしないまま、不用意な、または一方的に決めつけた議論はできません。そこで上記の問題は今後の調査結果を待って改めて議論するとして、以下では過去、公認会計士が逮捕され、有罪判決がなされた事件を紹介します。
【三田工業の粉飾のケース】1998年
放漫経営の結果、会社更生法の適用を申請した結果、組織的な粉飾が発覚。これに関連して会計監査を担当していた公認会計士が経営陣と一緒になって逮捕されたことは話題になりました。粉飾を知りつつ適正意見を表明するという収賄罪等により起訴され、一審では1年6ヶ月の実刑判決を受けましたが、控訴審判決で執行猶予が付されました。
【旧グッドウィルグループのケース】2008年
不動産の買収仲介で得た所得を隠して法人税法違反の容疑で逮捕された公認会計士は、19億円の法人税を不当に免れたとして、懲役3年(加えて法人として罰金230百万円)の実刑判決を受けました。
【プロデュースのケース】2005年
巨額の粉飾事件で、不正な会計処理に協力した公認会計士が、虚偽の有価証券報告書を提出したことに関連して、懲役3年6ヶ月の実刑判決を受けています。その社長も実刑判決でしたが、会計士よりも短い懲役3年でした。会計士が粉飾を主導したとされる極めて稀な事例です。
【ライブドアのケース】2004年
マスコミの露出度も大きかったこの事件は、会計上明確に区別されるべき資本取引と損益取引を混同し、売上を嵩上げして情報利用者を誤導した不正な財務報告が問題となりました。粉飾決算であることを知りつつ適正意見を表明した公認会計士は、懲役10ヶ月の実刑判決を受けました。
【カネボウのケース】2005年
粉飾の実態を具体的に知っていた公認会計士は、過去の不適切な監査が明らかになることで責任追及されることをおそれ、不正経理に荷担し粉飾の指南を行っていました。この会計士は懲役1年6ヶ月でしたが、執行猶予3年がつきました。
【キャッツの株価操縦事件のケース】2004年
虚偽の有価証券報告書の作成に関連して証券取引法違反の罪に問われた公認会計士は、「公認会計士vs特捜検察」という書籍を出版して話題になりました。捜査当初から最高裁判決が出るまで一貫して無実を主張し続けましたが、最終的には最高裁判決で懲役2年執行猶予4年の有罪判決で確定しました。
「一人の愚者が池に投げ入れた石は、十人の賢者をもってしても取り戻すことはできない。」
長年に渡って培ってきた信頼であっても、一瞬で瓦解することもあります。
最後に、公認会計士法の一条を掲載しましょう。
「公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。」
改めて、肝に銘じましょう。Taku