三菱電機、防衛省水増し請求事件に思う

 2012年1月28日にて、【不正事例】「三菱電機、防衛省等に対する不正請求」を掲載しました。

 防衛省が10余年前に始めた改革を見てきた者としては、不正は常に起こりうるということを改めて思い知らされました。

 1998年、東洋通信機(株)(日本工機(株)、藤倉航装(株)、ニコー電子(株)を加えて、防衛省では「4社事案」と称している)が起こした水増し請求事件では、水増し金返還請求時に防衛省が天下りを条件にこれを減額したことから、汚職(背任)事件に発展しました(事件の概要は、防衛庁庁汚職疑惑」に詳しい。)。

 このため防衛省では、1998年11月に「防衛調達改革の基本的方向について」「防衛調達制度改革の基本的方向」を公表し、調達のあり方について改革を実施しました(1999年4月「調達改革の具体的措置」)。

 防衛省が調達する武器は市販品ではなく、特注品がほとんどです。自動小銃で有名なカラシニコフ(Ak47)はロシア工場出荷価格が120ドル、対して日本の98式自動小銃は347,354円(出典「カラシニコフⅠ」松本仁一)に象徴されるように、適正価格は類似品ともその価格の妥当性を比較・検証できません。

 価格はコストの積み上げ方式で計算・決定されているのが現状です。価格の適正性は、防衛省のコスト計算規定に加え、企業が実施している原価計算が適正か否かに依存しています。

 そのため、防衛省は個別契約の原価の確認にとどまらず、原価計算システムが適切か否かを確認するための制度調査の受入義務を企業に課す改革を行いました。

 朝日新聞はどこに取材したかわかりませんが、「市場で価格が決まるわけではないため、コストの申告は原価計算方式で、事実上、業者任せになっているという。」ことであれば、防衛省の改革は、喉元過ぎれば熱さを忘れる、類いのものだったことを追求しなければなりません。

 防衛省はこの記事の適切性を明らかにするため、何よりも今後の予防につながるよう今回の発見経緯を公表し、特注品価格の検証方式を他の機関に供与しノウハウを共有するとともに、企業に”不正は発覚する”ことを周知してほしいものです。

  Tetsu